クリーニングコラム
>染色補正技能とは?
私どもの染色補正の技術は、実は本来洋服ではなく、和服の繊細な模様や染めを補正するための日本伝統の特殊技術です。その歴史は約300年にも及び、まさに物を大切にする日本人の気質と、器用さから生まれた技術だと言えます。日本の高度な染色文化の中で補正技法も発達したのです。現代においては国家より正式に「染色補正」技能と命名され、厚生労働省より国家検定技能として定められています。
和服の補正は非常に繊細で、多くの神経を要するため、高度な技術のみならず、センスや色を見極める鋭い視力までも問われます。
染色補正技能はフジテレビの番組「ザ・ベストハウス123」では「奇跡!思い出がよみがえる!スゴ技の修復職人BEST3」として写真修復・古家具修復の技術などを抑えて、見事第一位に扱われました。
・第1位:受け継がれる伝統!匠の着物修復
・第2位:何度でも生まれ変わる!古家具の修復
・第3位:記憶を呼び覚ます!驚異の写真修復
和服と言えば、繊維は絹というのは皆さんご存じかと思います。一般的に、絹は繊維が細く繊細であるだけではなく、染付けが弱く、数多くある衣類繊維の中でも、しみ抜きするには難しい対象でもあります。私どもは、そのような和服のしみ抜きのスペシャリストとして技術を習得いたしました。
私どもは、この和服のしみ抜きの技術をどうにか洋服に生かせないものかと研究を重ました。もちろん、和服と洋服では違いも多く、繊維も多種多様のものがあります。染めの弱い綿や麻から、薬品が使えないデリケートな化学繊維、また、凝ったデザインや特殊な加工など…そこで、私どもは独自の薬品選択や調合に辿り着き、他店では落ちなかったしみにも対応できる優れた技術を手に入れました。その技術は、全国技能グランプリで4位入賞を果たすほど高い評価を頂いております。
私ども染色補正士の最大の技術は、実は、「染め直し」(色かけ)という技術にあります。これは、一度抜けてしまった色を部分的に、あるいは全体を染め直すという技術で、完全にあきらめてしまいがちな脱色にも対応しております。
たとえば、和服と同じようにシルクでできていて、私たちに身近なもので、ネクタイがあります。ネクタイは、首元から前身にあるものなので、しばしば食べこぼしや飲みこぼしのしみが付いてしまいます。ネクタイに限らず、食べこぼしや飲みこぼしの場合、処置が早い場合は、簡単に落ちるものがほとんどです。しかし、時間が経ってしまったしみは黄変をして、繊維を頑固に染めてしまいます。黄変したしみは、「黄変抜き」という特殊しみ抜きで落とすことが可能なのですが、ネクタイなどのデリケートな繊維の場合、繊維の本来の色まで抜けてしまうことがあるのです。そこで、私どもは、一度抜けてしまった色を元に戻すという非常に高度な技術を使います。これは、単純に元々の色を染料で作って繊維に乗せれば良いというものではなく、繊維に微妙に残った色素と組み合わせる形で元々の色を表現していくのです。
【一級技能士】
●吉本 三厳
平成5年10月 労働大臣(当時)一級技能検定 染色補正技能 合格
平成6年3月 第13回全国技能グランプリ 染色補正業種 第4位
●深田 恵
平成元年10月 労働大臣(当時)一級技能検定 染色補正技能 合格
西日本染色補正研究会所属